研究概要 |
1.分光器の本体を購入し分光シグナルと温度・熱重量シグナルを同時に測定できる専用の装置を組立た。分光器の光源部と検出部はそのまゝ使用し、その中間に熱天秤の電気炉を取外し可能なように設置した。この光学ベンチは補助金額を考慮して自作した。2.電気炉は内径22mmと30mmで、厚さ2mmの硬質セラミックの円筒で、炉の側面のちょうど熱天秤の試料皿の上部位置に相当する高さに直径約3mmの穴を開けたものを2種類試作した。またその周囲を保温筒で包み、これにも同様に光路穴を開けた。白金線使用で約1400℃迄は直線的に昇温可能で、熱損失の少ない装置を作ることができた。反応管は透明石英製が使用し易いが、長時間の高温での使用でやゝ失透してくることがわかり、アルミナに光路穴を開けたものも作り検討をしている。3.試作装置を用いて無機水銀化合物の熱分解と原子化の機構の検討を行った。【Hg_2】【Cl_2】,Hg【Cl_2】共200℃で一段階種量が零になる熱重量曲線が得られたが、同時測光した原子吸光曲線は【Hg_2】【Cl_2】のみに認められ、Hg【Cl_2】は分子状のまゝ揮発して行くことが確認された。他のハロゲン化物(Br,I)も同様であった。HgOの熱分解は加熱により約450℃で次式で表される一段階反応によって分解することが知られている。HgO(s)→Hg(g)+1/2【O_2】(g)、従って、原子吸光曲線もこれに対応する一段の曲線になることが期待できる。しかしながら本装置による結果では450℃以外に約200℃付近にも原子化が認められ、二段階の原子化過程を経るという新しい知見が得られた。この様な報告はなく、本方法のこの方面での研究の有用さを証明したものと考えている。この原子化は様々な検討から、HgO自体が最初HgxO(x>1)で存在し、約200℃で本来知られているHgOになるという可能性が高く、固体結晶での酸化水銀(【II】)の化学種の問題としても大変興味ある現象であると考えられ、現在引続き研究を続行中である。
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