研究概要 |
研究室における化合物合成の物合には、限られた原料から多種多様の生産物を得ようとすることがほとんどである。我々に身近な簡単な化学合成のうちで、比較的数少ない原料から条件の違い次第で多種多様の生成物の得られるものとしては金属の錯化合物がある。中でもコバルト(【III】)の錯化合物は空気中でも安定なものがほとんどであり、何人かの先達が合成法の集大成を行っているので、目下の目的には好適である。いくつかの参考文献を渉猟して、コンピュータ制御向きの合成手法を選定し、これに従って実際に錯化合物(古くは錯塩と呼んだ)を作らせる際の諸細目についての検討を行った。 錯化合物の合成操作のの中には幾つかの繰り返しを含むものもあるし、また攪拌や濾過,吸引,傾瀉などのユニット操作と見なし得るものもあるので、これらをサブルーチン化して、目的物質の合成プロセスに合わせたものをまとめ上げて合成法のデータベースを作成し、ゆくゆくは自動合成装置によって数千種類の物質の自在な合成が可能となることが最終的な目標である。現在の所ではまだデータベース化されたものは十指にみたないが、何十年間にも亘っての蓄積のデータベース化はもとより短日月の間に可能となるものではない。だが、地道に蓄えてゆくことを可能としたのはやはりコンピュータの性能の向上のしからしむるところである。 ただしこの「自動合成」に対して、現実上の大きな障害は、合成条件を左右する優れた「低感度、高信頼性」のセンサーがないことである。余儀なく人間の視覚に頼らざるを得ない部分がまだ残っている。今後に残された問題は山積している状態である。
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