研究概要 |
本研究の目的は、水分子以外の塩基配位子を持つ二価あるいは三価の化合物にコバルト57をドープし、我々の考案したガンマ・エックス線同時計数メスバウアー分光法等によるこれらの化合物に対する実験から、結晶中での核変換に伴なう後遺効果の機構を調べることである。このため我々はコバルト57をドープした比放射能の高い各種の試料、Fe【SO_4】・【H_2】O,Fe【SO_4】・4【H_2】O,Fe【SO_4】・7【H_2】O,Co【SO_4】・7【H_2】O,Mg【SO_4】・【H_2】O,Zn【SO_4】・7【H_2】Oをつくり、実験を行なった。これにより新たに得られた知見は次のようなものである。 1.【^(57)Co】の崩壊により出現した【^(57)Fe】のイオン半径が結晶格子を形成している金属イオンの半径より大きい場合には【^(57)Fe】は三価となり、その逆の場合には二価となる。 2.硫酸塩のように構造をもった配位子もまた水分子同様に後遺効果の発現に重要な働らきをしている。 3.後遺効果により出現した異常状態のイオンの囲りの電場匂配の大きさは、そのイオンに属している配位子が隣りの金属イオンにも同時に配位しているかどうかによって大きく異なる。 これらの知見が得られた結果、核変換に伴なうイオン半径の変化、中心金属イオンに対する配位子の空間分布と後遺効果との関係が明らかになった。 今後三価の化合物に対しても同様の研究を行ない後遺効果のより深い理解をめざしている。そのために現在Nd【Cl_3】・6【H_2】O,Cr【F_3】・3【H_2】O等による実験を準備している。
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