研究概要 |
1.(1)【〔Fe(CN)_n(N)_(6-n)〕^(2-n/3-n)】型の錯体としてNがジエチレントリアミン(n=3)と2,3,2-tet(n=2)の錯体を単離することに成功した。前者はfac-、後者はcis-β型であった。鉄(【II】)錯体を塩基性水溶液で酸化すると逐次的な配位ポリアミンの脱水素反応が進行し、反応生成物の分光学的検討より、二級アミンは一級アミンに比べ容易に脱水素するが、ポリアミンにおいて当該二級アミンを中央とする3つの配位窒素原子が同一平面上になければ反応は起らないという仮説は支持され、錯体上で選択的な酸化反応が起こることが実証された。今後、生成物錯体を分解しポリアミンの酸化分解生成物をGC分析しさらに確認する予定である。(2)これらの鉄(【III】)錯体の塩基性水溶液中での不均化に伴う脱水素反応を分光光度計等によって測定した。速度はジエチレントリアミン錯体では三次式で表わされ速度定数はk=2,6×【10^5】【M^(-2)】【S^(-1)】であったが、2,3,2-tet錯体ではpH=12.9で極大を示し、v=k【K_1】【K_2】〔OH〕【〔Fe^(III)〕^2】/【{1+K_1(1+K_2)〔OH^-〕}^2】で表わされた。これより鉄に配位したアミノ基のプロトン解離定数【K_1】=10.6【M^(-1)】がえられ、鉄錯体間の電子交換速度定数kは、【10^8】【M^(-1)】【S^(-1)】と見積られた。 2.上記錯体のCV測定で可逆的な酸化還元波がジエチレントリアミン錯体では0.23V、2,3,2-tet錯体では0.30Vでみられた。これまでの知見より後者では配位子構造に因る鉄(【II】)の安定化が起っていると考えられる。 3.鉄(【III】)錯体の【^1H】NMRは常磁性シフトによりよく分離したシグナルを示し、2,3,2-tet錯体ではすべてのプロトンが分離観測されcis-β構造と同定する根拠を与えた。JAMOL3の本学への移植が完了し、現在1,2-ジアミン錯体の分子軌道計算を行っている。
|