研究概要 |
ポルフィリン類鉄(II)錯体における配位子のσおよびπ結合性 鉄57のメスバウア分光で測定される2種類の主な量は異性体シフトδおよび四極子分裂【ΔE_Q】であり、それぞれ鉄の電子状態を反映する。一方、天然にあってさまざまな生物学的機能をもつヘム蛋白群の活性中心はヘム、すなわちポルフィリン鉄錯体である。我々は、アザポルフィリンであるフタロシアニンも含めたポルフィリン類の鉄錯体における配位子の結合性を表わすパラメタΣおよびПを、メスバウアデータδおよび【ΔE_Q】から決める、全く新しい方法を確立した。Σは配位子のσ供与性が強いとき大,Πはπ供与/受容性が強い/弱いとき大の、それぞれ相対的な数量である。平面配位子のポルフィリンをp,軸配位子をLとすれば、四配位および六配位鉄(II)錯体は、Fe(p)、およびFe(p)【L_2】と書ける。3通りに分けてΣおよびПを決めた。 1.Fe(p)におけるpの結合性パラメタ。pが種々のフタロシアニン誘導体の場合には、δおよび【ΔE_Q】の変化は不規則であるが、ハメットの置換基定数の和Σσと結合性パラメタとの間には良い相関が見出された。Σσが大きいほど、すなわち置換基の電子吸引性が強いほど、ΣおよびПは小さいという、合理的な結果である。一般のポルフィリンの場合にも、塩基性度が低いほどΣおよびΠは小さいという、当然期待される結果になった。 2.Fe(p)【L_2】におけるpの結合性パラメタ。Lの結合性がpに依存しないと仮定して、いくつかのLの組についてΣおよびПを計算した。 3.Fe(p)【L_2】におけるLの結合性パラメタ.pの結合性がLに依存しないと仮定して、いくつかのpの組についてΣおよびПを計算した。 上記2および3の結果を検討すると、それぞれ仮定が正しくない、という結論に達した。従って、Lおよびpの結合性がたがいに依存するようなcis効果があることが、改めて確認できた。
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