研究概要 |
2年度にわたって, それまでに蓄積された野外個体群の調査データをコンピューターのデータベースとして入力し, これをもとにハダニ類とその天敵個体群の時間的および空間的分布変動について解析した. また, 特定の天敵とハダニとの相互関係を, ビデオテープレコーダーを用いて行動学的に解析するとともに, ハダニとカブリダニの繁殖実験および天敵による捕食実験を行った. 成果の概要は以下の通りである. 1.亜社会性を示すハダニであるタケスゴモリハダニの野外での巣の創設パターンおよび実験室で発見された特異な繁殖特性から, 本種の亜社会性の発達には同巣個体間の血縁選択が関与していることの傍証を得たので, この点をまとめて論文として公表した. 2.さらに, タケスゴモリハダニの亜社会性の進化には, この種を専門的に捕食するタケカブリダニがきわめて重要な役割を演じてきたことが, 個体群動態・生活史・行動および捕食実験によって明らかとされた. 3.ササ葉に発生する他のハダニ類がタケスゴモリハダニの天敵の交替餌として重要であり, 特定の種のハダニ個体群に注目する場合に, その周囲に発生する他の種の個体群動態も考慮する必要があることが判明した. 4.研究の副次効果として, 従来のハダニおよびカブリダニの生活史研究法に重大な欠陥のあることが判明した. そこで, 本研究の一貫として, 検討を加え, 実験面の温度条件が環境湿度との関係でどのように変動するのかについて, 予備的な成果を得たので, 論文として公表した.
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