研究概要 |
本研究によって当初に意図した研究目的のうち, (1)「木崎湖および深見池における脱窒の進行過程の把握」については, 1986年度において深見池で7回, 木崎湖で3回の観測を実施し, 現場脱窒活性の測定から湖沼における脱窒の進行過程についてほぼ満足すべき結果を得ることが出来た. その成果は既に学会誌に論文として公表されている(Terai,1987;Terai1988). 研究目的(2)「蛍光抗体法による自然水域脱窒菌群における優占菌種の把握および各菌種レベルにおける直接計数」については, 深見池の単離脱窒菌7菌種に対する抗血清を調製し, 蛍光抗体法を用いて定性的な段階において優占菌種が示唆された. 木崎湖における優占2菌種と同一性菌の検出率が9.8%であったのに対して深見池では同じく優占2菌種に対する同一性菌の検出率が4.8%と低く, 深見池における脱窒菌種の多様性が示唆された. しかし本研究で目的とした直接計数法については, 未だ方法の改善が必要であり継続して研究を進めている. なお一般従属栄養細菌についても蛍光抗体法の適用を試みるためにその検討を行なった結果は学会誌に論文として公表された(Kuroda et al,1987). また, 研究目的(3)「溶存酸素濃度や酸化還元電位を自動制御した培養系を用いて, 酸素や硝酸などの電子受容体や電子供与体としての有機物などによる各種脱窒菌の脱窒活性の支配様式を明らかにする」については, 溶存酸素濃度を制御した培養系における3種脱窒菌の脱窒酵素系の生合成に及ぼす酸素濃度の影響を明らかにした. 亜硝酸還元酵素の合成は好気的になるほど抑制されるが, 亜酸化窒素還元酵素の合成1〜2ppmの酸素濃度が至適範囲であることが示された. 脱窒菌の生育について蛍光抗体法を用いて各菌種の混合培養における競合関係を解析し, 現場の脱窒菌の競合関係と対応させる試みは今後の課題として残された.
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