研究概要 |
1.ナガウニは沖縄のサンゴ礁海域で最も普通に見られるウニであり, 形態的及び生態特徴によりA〜Dの4タイプに類別される. このうちタイプB, C, Dはリーフクレストでサンゴ礁を浸食して作った穴の中に生息していることが多い. 一方, タイプAは礁池内などに見られ, 多数集合していることが多い. これらを一定区域内から除去し, 回復過程を調べた. タイプAは1〜2ヶ月以内にかなりの数が再侵入するが, 他は, 1年以上経過後も除去区で観察される個体は稀である. 2.穴の中にはウニは1個体のみが見られ, 別の個体を入れると追い出す. その排他性はC, B, Aの順で強い(Dについては未調査). 3.穴の中に住む個体は外に出ないと思われる. 従って穴外にはナガウニの活動の影響を受けない海藻が優占する群集が発達する. 海藻の間や岩のくぼみ, 小穴を利用して小甲殻類, 多毛類, 貝類などが生息しており, 多様度は高い, 一方, 穴内はgrazingの影響を常に受けるので付着生物の生存は困難である. 内部の生物群集は極めて単純である. ところがナガウニが高温その他の要因で死亡するとそこは長期にわたってナガウニが欠落するので群集の変化が生じる. 砂泥の堆積が顕著になり, 埋在性動物が侵入し, 岩肌には生物の付着が開始される. 海藻も生育し, 群集は複雑化するが, ナガウニと共生しているヤドリエビは生息場所を失うので消滅する. 4.以上の様にナガウニはサンゴ礁海岸の潮間帯下部, 亜潮間帯上縁部の生物群集の成立過程に大きく関与している. 生物浸食作用により岩上に凹凸を形成し, 環境の異質性を高めること, 及び活動域が, 巣穴内に限られることが, 大きな要因である. タイプAは礁池内で大きく移動するのでgrazingにより生物群集に影響を及ぼしていると考えられるが, 本研究では充分な結果を得ることが出来なかった.
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