研究概要 |
植物個体群の成長を解析した今までの研究は, 主に収量, 平均個体重などを指標として個体群の成長を記録してきた. しかし, これらの指標は個体群構成個体の総和であり, 決して個体成長に具体的記述を与えるものではない. 個体群の成長に対する理解を更に深め, その応用をはかるためにも, 個体の成長及び個体成長が個体群の成長へと統合されていく過程についても十分な認識を得る必要がある. 本研究は研究代表者が開発した手法を用いて, 平均個体重の成長と個体重の成長を統一的に定式化し, かつ個体の成長にともなう個体重の順位変動を定量化することを通じて, 個体群内の個体成長の実態にせまることを目的とする. このため, オオオナモミ実験個体群を育成し, 定期的に個体群全構成個体の成長を記録した. 過去2ケ年の研究で得たデータの一部は現在も解析を継続中であるが, 今までに明らかとなった知見は以下の通りである. 1.平均個体重ω^^-の時間t方向での成長はm次のロジスチック曲線に従い, 成長曲線の係数は栽培条件に依存して変化した. 2.ω^^-の成長軌道に矛盾しない個体重ωの成長軌道を求めるため, ωの分布関数を-種のピアソンVII型分布で近似した. 3.分布関数の係数とω^^-の関係を検討し, ωのt方向での成長をωの分布関数Nの逆関数とω^^-の積から成る実験式で表わした. ここでNはωの大きさの順位に一致し, 実験式では唯一のパラメータとなっている. 4.ω〜(N, t)の曲面上を各個体はさまざまな軌道を抽きながら成長した. この成長軌道のパターンを主成分分析の手法を用いて5タイプ(高順位型, 順位上昇型, 中順位型, 順位下降型, 低順位型)に大別した. 5.ωの循位変動の確率論的背景を推移確率行列を基に解析した. 個体の死亡がない状況下では, 確率行列は2重確率行列となることが判明した. 確率行列を基に, 順位変動をシュミレートした.
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