研究概要 |
細胞性粘菌Dictyostelium dis coideumの一発生段階である細胞集合期には, 細胞の形が細長くなり, その末端どうしをつなげて細胞ストリームを形成してセンター細胞に集まる. この細胞集合期のストリームをなす細胞の末端には接着性タンパクである分子量8万の糖タンパク質の出現することが知られている. これまでこの接着のメカニズムを明らかにするためポリクローナル抗体を調製し, さらにこの抗体由来のFabにより, 細胞間接着を阻害しうることが明らかになった. 本研究では以上の事実をふまえて, 粘菌の接着の分子的機構をより詳細に解析することを意図して, まず膜糖タンパク質である80KDaタンパク質をポリアクリルアミドゲルから電気的に溶出する方法を開発し, この抽出したタンパク質をマウスに免疫して, 単クローン性抗体のクローンを5種分離した. さらにこの方法では糖鎮を認識する抗体が得られないことが確かめられたのでさらに, 抗原をクロトグラフィーで部分精製し, これを抗原としてさらに8種の単クローン性抗体を得手, 抗体の結合性を明らかにした. その結果抗体は大きく三つのカテゴリィーに分けられることが判った. 第一はこの糖タンパク抗原のタンパク質を認識する抗体であり, 第二はこの糖タンパクの2種の糖鎮のうちI型に特異的に結合する抗体であった. 第三はII型の糖鎮を認識する抗体であり, 特にこの抗体は接着阻害効果が得られたことから, リポソームと生細胞の相互作用の解析に非常に有効な抗体が得られたものと考えられる. 他方, 脂質二重層に80KDaタンパク質を組み込むため, 脂質二重層作製装置を作製した. この装置は固層に脂質一重層だけでなく脂質二重層を作ることができ, より自然な状態に膜タンラク質を導入することができる. この方法の他, 透析法により, 膜タンパク質を導入して, 相互作用をさらに検討している.
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