研究概要 |
酵母Saccharomyces cerevisiaeのミトコンドリア(mt)は, 独自のDNAをもち, タンパク質等と結合してmt核様体を形成し, 異なる生長条件下で分散, 統合等の変化を示す. この状態変化がmt遺伝子, 細胞核(nc)遺伝子によって調節され, 又, mt遺伝子がnc遺伝子の発現を制御する機構を調べた. 1.各種突然変異誘起処理によるmt突然変異株の分離:エチジウムブロミド(EB), レーザー, MnCl_2, 紫外線(UV)で酵母を処理した結果, EBによってmt性, UVによってnc性の呼吸欠損変異株を分離できた. 2.変異株の性状の分析:(1)mt核様体動態の変異株:EB誘導rho-株の多くの核様体は, 生長各期ともrho-特有の凝集形態を示し, nc性変異株の場合は, 25°Cで正常, 36°Cで凝集, 偏在, rho°を生じる温度感受性のタイプと温度に係りなく凝集, 偏在し, rho°を生じるタイプであった. (2)接合型転換能, 胞子形成能に対するmt遺伝子の影響:ホモタリック酵母FE-1の胞子発芽時に10^<-3>の頻度で出現する呼吸欠損細胞の90%が半数体(その大部分がα型)であった. また, ホモタリズム菌から誘導されたrho°のα型細胞YGU-20のプロトプラストに, mtを含むYGU-4の無核ミニプロトプラストを融合させると, 呼吸活性の獲得とともにa/αホモタリズムを回復した. 3.mtDNAの分離, 解析, クローン化とそのプロトプラストへの導入法:単離mt核様体・破砕細胞からのmtDNAの抽出, 制限断片の泳動を行っている. ただし, クローン化には至っていない. 又, PEG法, 電気的融合法などの条件を検討中である.
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