研究概要 |
単生窒素固定菌の固定産物は, 土壌根圏への拡散等の為, 植物に吸収利用される量は限られる. 一方, 根粒菌はマメ科植物と共生し, 根粒中でのみ窒素を固定する為, 固定産物はその殆どが宿主植物内へと転流, 代謝されその生長に寄与する. 本研究では単生窒素固定菌に植物との共生能を賦与し, 植物組織内で窒素固定を行わせることにより固定産物の利用効率の向上を目的とした. そこで, 根粒菌の持つ共生能を組織学的, 分子生物学的に解析し, 単生窒素固定菌への導入の可能性を検討した. Rhizobium trifolii4S(Nod^+, Fix^+, Wild type)の擬似根粒形成変異株Qnl(Nod^+, Fix^-)は宿主であるクローバ以外に, インゲンに根粒を形成することを見出した. 電子顕微鏡による観察より, Qnl株がインゲンに形成した根粒はFix^-であることを除き, 形態的にはR.phaseoliの形成した正常根粒と同様であると判断された. すなわちQnl中のnod-geneがインゲン内で正常に発現したものと思われる. クローバに正常根粒を形成する4S株は分子量350, 280, 210Mdのプラスミドを有し, 感染〜窒素固定発現に至る一連の遺伝子群は210MdのSym-plasmid上に存在する. 350, 280Mdと62Mdのプラスミドを持つQnl株の擬似根粒形成に関する遺伝子は62Mdのプラスミド上に存在するものと思われる. この点の解明の為, 4S株のnod-geneを分離し, これをプローブとしてQnl株やR.phaseoliのnod-geneとの相同性の検索を試みる必要がある. 4S株のnod-geneを分離する為に, 全DNA Libraryを作成し, triparental mating法によりSym-plasmid curing株Hlを受容菌として形質転換を行い, nod-geneの分離を進行中である. 以後は, nod-gene中に存在していると思われる宿主特異性行(hsn)を特定し, Qnl株におけるhan-geneの調節機構を解明し, 単生窒素固定菌と植物との共生の可能性を追求する計画である.
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