研究概要 |
従来の分光法あるいは室温EPR法では測定が困難であった、緑色植物の光化学系2酸素発生反応に働くMn原子、及び特殊なキノン、Z、の反応中心内部での存在部位を極低温EPR法を用いて明らかにした。Z分子と外部溶液中に加えた常磁性イオンDysprosiumとの相互作用の強さが両者間の距離の-6乗に反比例し、後者の濃度に比例する事を利用して、Z分子が膜外側表面から約45オングストローム内側表面から約15オングストロームの距離に存在しており、内側表面には33Kd,24Kd,18Kdの3種のタンパク質が結合してDysprosiumがZ分子の近傍に結合するのを妨げている事を明らかにした。また同じ方法をチトクロームb-559に適用してこのチトクロームのヘムが膜表面からやはり15オングストローム程内側に存在する事を明らかにした。 光化学系2の電子受容体として働くキノン(Qa,Qb)と鉄原子の相互作用をやはり極低温EPRで測定、解析した。これらのキノンが共に鉄原子と相互作用している事、Qbは電子伝達阻害剤オルトフェナントロリンやDCMUの結合により鉄原子との相互作用を失い、これらの阻害剤と鉄原子の相互作用が新たに出現するので、これらの阻害剤がQbの結合部位にはいり反応を阻害している事を光化学系2粒子、及び光化学系2反応中心コア複合体を用いてあきらかにした。またpH,酸化還元電位依存性の測定により、この鉄原子の存在環境の特性をあきらかにした。 光化学系1反応中心においては、反応中心クロロフィルP700の近傍のクロロフィルの配列状態、光化学系1に存在するがその機能が明確にされていなかったヴィタミンK1が電子受容体として働き、逆反応を妨げ効率のよい光化学反応を行わせていることを明らかにした。
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