研究概要 |
(1)青色光によって促進される, 孔辺細胞プロトプラストからのH^+放出の実体の候補として原形質膜のH^+-ATPaseの存在が示された. この, H^+-APTaseは, vanadate, diethylstilbestrolに阻害され, Mg^<2+>が必須で, 活性の至適pHは, 6, 8であった. さらに, 活性発現に, Mg^<2+>が必須であったが, K^+による活性の増加は認められなかった. また, その活性は2mM ATPで飽和し, Kmは0.5mMであった. ただし, このH^+-ATPaseが青色光により活性化されるか否かはさらに検討が必要である. (2)青色光によるH^+放出のエネルギー源として, この反応が, KCNやNaN_3に強く阻害されることから, 呼吸による酸化的リン酸化反応で生成するATPが推定された. さらに, バックグラウンド光として, 通常与えている連続赤色光の照射が無くても, この反応の90%が進行し, 上記の推定を支持している. (3)青色光パルスにより孔辺細胞プロトプラストの膨潤が観察された. この膨潤の大きさは, 体積にして15%程度で, パルスを与えてから, 15分で極大に達しインタクト葉の気孔開孔反応とよく一致した. (4)原形質膜のK^+チャンネルについて, パッチクランプ法により調べた. 孔辺細胞の原形質膜上に, そと向き整流性のK^+に選択的なチャンネルが見出された. このチャンネルは, ユニットコンダクタンス10-30psで, 膜電位に依存して(-40mV以上で開く), チャンネルの開閉を繰返した. このチャンネルは, メンブレンパッチでもセルアタッチでも観察され, 実際に孔辺細胞の原形質膜上で機能していることが示された. しかし, 上記の性質から, 気孔開孔よりむしろ気孔閉鎖に関与している可能性が高く, 現在うち向き整流性のK^+チャンネルの探索を行なっている.
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