研究概要 |
1.沖縄島の新川川と比地川, 西表島の後良川の渓谷植物相を比較し, その共通係数(類似度)や植物相を構成する分類群の数などを解析した. 新川川と比地川の共通係数(%)50.6;新川川と後良川33.7;比地川と後良川36.0となった. 分類群ごとの共通係数ではシダ植物で高く, 単子葉植物で低くなっている. 産出する植物は全体で505種で琉球列島植物相の約33%に当る. このなかには地域を代表する固有種が多く含まれている. 2.琉球列島植物相の構成種の分布型を類型化を試みた. その結果, 地域ごとの植物相の特徴が数的に把握できることがわかった. シダ植物相は50%程度が熱帯要素で東南アジア区系に類し, 被子植物は日華区系要素と東南アジア区系要素が半々で, 古生花被亜網が固有型と本土要素を多く含む. 3.ボチョウジとナガミボチョウジの形態比較, 染色体の観察を行った. ボチョウジにみられる葉裏のpit domatiaは安定した形質で, 両種の区別点となる. 染色体数はボチョウジで2n=42, ナガミボチョウジで2n=84さらに推定雑種で2n=63と算定した. ボチョウジ属の基本数x=11とは異なり, これらの倍数性については細胞遺伝外的に解明する必要がある. 4.沖縄島からスミレの新種オリヅルスミレViola stoloniflora Yokota et Higaを記載した. Nomimium節Serpenten亜節に属し染色体数は2n=22で, 同節Adnatae亜節ヤクシマスミレ群に近縁である. (植雑, 101:1-8, 1988). 5.日本産フタバラン属4種の核型分析を行った. 核型と染色体数からこれらは基本数x=17のナオフタバランと, x=19のヒメフタバラン・ミヤマフタバラン・コフタバランの2群に区別された. ヒメフタバランでは琉球列島でB染色体と倍数性に関して変異がみられることがわかった.
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