研究概要 |
リポフォリンは, 昆虫の血液にあって脂質輸送に携わるリポタンパク質である. 水に不溶のジグリセリドや炭化水素などの脂質を血液を介して輸送するために, リポフォリンがどの様な構造をとっているかを明らかにするのが本研究の出発点である. ジグリセリドは, エネルギー源であり, 炭化水素は, 代表に運ばれ昆虫を感想からまもっている. これまでに, 分子量, 約60万, タンパク質と脂質の比がほぼ1:1であり, 直径約150A2F2の球の表層には, リン脂質とアポタンパク質が存在し, 炭化水素が内部コアを形成していることがわかっている. 本研究では, X線小角散乱法を用いて, より詳細なリポフォリンの構造を探ることを目的としている. ゴキブリ, バッタ, シンジュ蚕のリポフォリンの小角散乱像を較べてみると, 炭化水素を持つゴキブリやバッタのものと, もたないシンジュ蚕とでは明らかな違いがあった. コキブリやバッタの場合, 電子密度の異なる領域の存在することが, わかった. そこでゴキブリやバッタのリポフォリンを完全な球とし, 電子密度の異なる領域が中心対称的に存在すると仮定してシミュレーションを行なった. その結果, 半径84A2F2の球の表層(厚さ24A2F2)に電子密度の高い層, 中心に電子密度の低いコア(半径37A2F2), 両者の間に電子密度が, ほぼその中間の層をもつモデルが, 浮かび上がってきた. リポフォリンの構成員の電子密度を調べると, 表層は, リン脂質とアポタンパク質I, 内部コアには炭化水素が相当し, 私達が既に核磁気共鳴法(NMR)や示差熱測定(DSC)によって得た結果と, よく一致した. また, 中間層には, ジグリセリドとアポタンパクIIが存在することが解った. こうして, 水に不溶の脂質を内部に積み込み, 表層を親水性の構成員で覆われたリポフォリンの三層構造モデルを提出した.
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