研究概要 |
ヘキシレングリコール(HG)は, 海産動物, ウニ卵の分裂装置の単離に使われ, 分裂装置を軽く固定し安定化させると考えられている. しかし最近, HGを含む海水(HG-SW)に卵を入れておくと, 分裂装置が大きく形成されることがわかった. 吾々はこの現象に着目し, ヒトデ極体形成時にこれを作用させ, 極体分裂装置にどのように働くかをしらべた. イトマキヒトデの卵母細胞を1-メチルアデニン海水中で成熟を促進させる. 成熟中の卵母細胞を, 2.5%HGを含む海水中に入れておく. 20〜30分後始め小さな明るいスポットとしてみえた分裂装置は, 細胞膜に接して, 時間とともにその大きさを増して行く. 大きい分裂装置は, 細胞膜に適用か垂直にその長軸をむけているか, ごく少数は細胞の中心に止まっている. 分裂装置を単離してみると, 星状体の直径は, 対照の2-3倍になっている. 卵母細胞内の分裂装置の位置によって, 大きな分裂装置は, 成熟分裂の間に3つの異った現象を誘起する. 即ち, 巨大極体形成, unilateval分裂, 等分裂であり, それぞれ, 約50%, 45%, 5%の割合である. 脳チューブリン(ブタ)を用いて, in vifvaでHGの効果をしらべると, 微小管の重合を顕著に促進することがわかった. HGは分裂装置を軽く固定, 安定化させるばかりでなく, 形成する極小管の重合を促進することがわかった. これらのことから, 上述の現象は次のように説明出来る. 成熟卵の卵母細胞はHG-SWに入力されると, HGはやがて卵内に拡散して, 成熟中に移動しつつある分裂装置を固定化, 安定化してその場所にとどまろう. また微小管の重合を促進して, 大きな分裂装置を形成する. 大きな分裂装置は, 成熟分裂を変えて, その分裂装置の位置にしたがって, 上述の3つの現象をひき起こす.
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