研究概要 |
細胞質周期の獲得, 及び精前核形成に関与する卵核胞内因子について調べた. [1] 因子の獲得異性 : キヒトデ, モミジガイ, トゲモミジ, 及びフジナマコの卵母細胞卵核胞の内には, イトマキヒトデ卵母細胞に対して有効な因子の存在が確かめられた. 少くとも刺皮動物間では共通な因子が存在する. [2] 卵形成期の出現時期 : 十分に成長した卵母細胞の約1/2の体積しかなく, かつ, 卵成熟誘起ホルモンに対して反応性をまだ持たない小さな卵母細胞の核にも有効な因子の存在が確認された. [3] 卵核胞の単離, 有効成分の抽出及びその性質 : サイトカラシンB処理により卵表層を弱めた卵母細胞を, ショ糖密度勾配中で遠心することにより, 純度の高い卵核胞を大量に単離出来る方法を開発した. 単離核は, 大きさ, その他の形態は卵母細胞中のものと大差ない. 極く薄い細胞質層により囲まれている. この単離核を抽出液中で, 凍結-融解することで破砕すると有効成分が溶出して来る. これを1万×で遠心すると, 活性は上澄にくる. これを更に10万×gで1時間遠心すると, 活性は中間層に集まり, 上澄と沈澱には認められなかった. 熱処理(80°C, 10分), 及びタンパク質分解酵素で処理すると, 活性は消失した. 以上の結果は, 有効な因子は比較的分子量の大きい(あるいは何かに結合した)タンパク質であることを示唆している. 検定に用いた注入液中のタンパク量は2mg以下で有効であった. 有効成分は, 抽出後少くとも一週間は0°C中で安定であった.
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