研究概要 |
無性生殖においては, 個体発生の出発点が多細胞で, これらの細胞の間に特に差異が存在しない場合がある. このような系を使うと, 細胞集団がいかにしてオーガナイズされ, いかにして調和のとれた個体が形成されてくるか調べることができる. そこで, アラレボヤの芽茎芽出芽を利用して調べてみた. 研究はストロン(芽茎)から個体が生じる過程の組織学的研究と, 実験発生的研究とに大別され, 後者はさらに4部に分かれる. 第一部では, オーガニゼイションセンターの確立期を, ストロン結紮の開始時期や持続時間をいろいろ変えて調べた. 第二部では, センターの形成部位とストロン本来の頂基性との間に関係があるか否かについてしらべた. 第三部では, 一つのストロンから生じる個体の数とオーガニゼイションセンター形成時の内部構造との関連を調べた. 第四部では芽体のどのような部域に最も早く形態形成(消化管原基形成)が見られるかを調べた. 組織学的研究の結果, 切断後25-30時間で囲鰓腔上皮由来の内胞基部側に消化管原基が形成され, さらに5時間位経過すると咽頭原基ができ始めることが分かった. 第一部の実験で, 一つのストロンから2個体が生じるためには, 結紮をある時期(切断後25時間)以前に始め, 一定時間(約20時間)以上結紮を持続する必要があり, センター確立期はほぼ消化管原基出現期と一致することがわかった. 第二部では, ストロン自体の極性により, 内部の血球が頂部側に寄り, 基部側にセンターが形成されると思われる結果が得られた. 第三部では, 結紮により内胞が2分した時に2個体が形成されるという仮説を支持する結果がえられた. 第四部では, 内胞上皮で消化管原基形成が起こる位置は切断刺激により決められていると考えられる結果が得られた.
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