研究概要 |
ツメガエル受精卵における外来性DNAの注入実験をおこない, 次のような結果を得た. (1)バクテリオファージ入のDNAを注入した受精卵では細胞質に核様体が形成され, これは初期発生の過程において娘細胞の核に分配される. (2)ツメガエルのrDNAを含むプラスミドを環状のかたちで注入した場合, このDNAは環状のまま維持され尾芽胚期項に胚体から失なわれた. (3)ツメガエルrDNAを注入した胚が2週間後のオタマジャクシになってからDNAを抽出して調べたところ, これが胚の染色体に組み込まれていたことを示す結果が得られた. (4)バクテリアのクロラムフェニコール・アセチルトランスフェラーゼ遺伝子を含む種々のプラスミドを卵母細胞, 未受精卵, および受精卵に注入し, その際のCAT遺伝子発現について詳細に調べた. その結果, 卵母細胞では直鎮DNAは発現しないが, 環状DNAは活発に発現することがわかった. (5)但し, 卵母細胞核内でのCAT遺伝子発現にはエンハンサー・プロモーターは不要であるという結果が得られた. (6)未受精卵と受精卵に注入した場合, いずれの場合にもCAT遺伝子は発現した. しかし, 環状プラスミドの発現の場合はエンハンサーに依存するが, 直鎖のDNAからの発現にはエンハンサー・プロモーターは必要でないという結果が得られた. (7)この場合, サザン・ブロットによって調べると直鎖DNAはDNAリガーゼの働きを受けていわゆる直鎖のコンカテマーとなっていることが考えられる結果が得られた. 以上のことをまとめると, 本研究によって外来性DNAの細胞生物学的および分子的挙動の概要がとらえられたと考えてよい. また分子的挙動の結果としての遺伝子発現の様態についておおよその結論が得られた. そのもっとも重要なポイントは, 外来性DNAの発現の場合においても他の場合におけるように分子内の緊張度が重要であるらしい.
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