研究概要 |
1.昭和61年度内におけるクッタラ湖、ならびにその周辺における野外調査では具体的成果を上げられず、今だエゾサンショウウオの幼形成熟個体生存の可能性を明確に出来ていない。 2.しかし、実験室内での飼育実験により、幼生は低温下でも成長するが変態はまったくおこらないことを確かめた。この内分泌的作用機構解明における成果は以下の通りである。 (1)、低温飼育した個体の甲状腺は分泌機能低下を示すことを電顕観察と画像解析装置を用いて明らかにした。 (2)、各温度条件(4℃,10℃,20℃)でエゾサンショウウオを飼育し、低温下でも幼生は成長するが、変態は抑制される。この原因は、成長促進作用を持つプロラクチンホルモンは低温下でも作用発現するが、変態を促進する作用を持つ甲状腺ホルモンは低温下では作用発現しないことによるものである。 (3)、甲状腺ホルモンが低温下で作用発現されない理由は、ホルモンリセプターに甲状腺ホルモンは結合できるが、その後のリセプター増加が誘導されてこない(20℃では結合後、リセプター数が増加する。変態の促進には甲状腺ホルモンリセプター数の増加が必須と思われる)ことによっている。 (4)、また、生殖腺刺激ホルモン(FSH)は低温下でもよくリセプターと結合し、低温下でもホルモン作用発現が有効と考えられる結果を得た。 (5)、長期の低温飼育により、血清浸透圧が高まることが解った。この血清浸透圧増加は水中におけるエゾサンショウウオの適応能力を高め、エゾサンショウウオを水中にとどめさせる要因になり得ることを確かめた。
|