研究概要 |
バテイラの卵膜ライシンについては, 全アミノ酸配列およびそれより推定された二次構造, さらに化学修飾法によって決められた活性部位が明らかにされている. これに加えて, この卵膜ライシンの卵膜における結合部位の構造の決定を行なうために次のような実験を試みた. アルカリ分解によって可溶化された卵膜はライシンの卵膜に対する溶解反応を完全に阻害する. この阻害活性を指標にして, この可溶化した卵膜をStaphylococcus aureus V8プロテアーゼ・キモトリプシン消化とトリフロロメタンスルホン酸での脱糖処理によって細分画した結果, N-アセチルグルコサミンと比較的に疎水性のアミノ酸を多く含む分子量90,000の糖蛋白分画が得られた. プロナーゼ消化とグリコペプチダーゼA消化によって, この分画の阻害活性が失われるので, この結合部位にはN-グリコシド結合によるN-アセチルグルコサミンとアスパラギンを含む特異的なアミノ酸配列が必須と思われる. 更に細分画したのち, 溶解阻害活性をもつ最小の分画を決めてこの一次構造を明らかにする予定である. 又, ライシンの抗体を用いて, プロティンA-ゴールド法により免疫細胞組織化学的に卵膜上のライシンの結合部位を決める. これらのデータを総合して, バテイラのライシンの作用機構が分子レベルでどのように考えられるかを検討する予定である.
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