研究概要 |
マウスを材料として, 嗅覚刺激, 特に他団体からの嗅覚情報が生殖に関連した行動および生理におよぼす影響, ならびに嗅覚情報への反応性の発達に関して種々の実験的研究を行ない, 多くの知見を得た. その成果の概要を以下に記す. 1.雄マウスの性成熟は正常雄と隣接することで抑制され, 正常雌とでは促進されるという報告がある. 本研究ではこれを多面的に解析した結果, 行動面や諸器官の発達ではその通りであるが, 精子の成熟は正常雄によって抑えられないことを見出した. 2.雄マウスから出される雌誘引因子を詳細に解析し, 雌誘引には尿中のアンドロゲン依存性物質と, 包皮腺由来のアンドロゲン非依存物質の共存が必要であることを確認した. 3.上記の尿中物質のうち, 既に報告されているdehydro-exo-brevicominの効果の立体特異性を調べた結果, 両光学異性体が共存しないと誘引効果を示さないという極めて興味ある結果を得つつある. 4.マウスの尿マーキングパターンにみられる顕著な性差の発現過程を詳細に明らかにし, 発表した. 5.他個体からの嗅覚情報が尿マーキング行動に及ぼす影響を成熟過程を負って調べた結果, 性成熟の過程とは別に, 社会行動の発達過程に沿った変化があることを見出した. 6.同性および異性他個体のにおいに対する尿マーキング行動には顕著な性差があるが, 雄型の行動は出生直後におよび成熟後の両時期にアンドロゲンが存在することによって発現することが確かめられた. 7.以上の成果は7回目の国内・外の学会で発表すると共に, 6編の論文として印刷公表を予定している.
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