研究概要 |
日本産直翅目昆虫の中ではキリギリス科がもっとも分化したと思われる. 今回の調査ではこの科のうちヒメツユムシ亜科とキリギリス亜科の種について検討し, 種分化の研究を行った. 結果は次のようである. 1.八重山諸島におけるPhlugiolopsis属ヒメツユムシの発見. この種は今回記載された種であるが, 本属の昆虫は, 従来, ロンドン郊外のキュー植物園のシダ温室からのみ知られていて, これ以外には発見されていないものであった. それが今回の発見によって, 本属が東洋区系由来であることが証明されたことにより, いわゆるキュー植物園種も東洋区由来にちがいないと推定される. 2.ヒメツユムシ亜科のLepto teratura属の琉球列島における種分化. この属のヒメツユムシ類は, これまで本州のみから知られていたが, 今回の調査で, 琉球列島に分布することが明らかになった. 琉球列島のもののうち, 沖縄産2種は同所的に生ずるもののごとくであるが, 両者はひどく異っていて, それぞれヨナヒメツユムシとヨナハナヒメツユムシと命名された. 一方, 八重山諸島中石垣島・西表島両島に分布するものは同一の種で, ヤエヤマヒメツユムシとしたが, 台湾のTaiwanaに近いものである. これら種の関係と琉球列島の地史にまとずき, 琉球列島におけるLeptoturaの種分化について考察した. 3.対馬産の大形キリギリス類の1種について. 対馬に森林依存の大形のキリギリス類の1種が生息するが, 韓国産の近縁種と比較し, 新種と判断されたので, 記載を行い, また大陸からの侵入径路について推定した.
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