研究概要 |
最近、多くの生物活性ペプチドが見出され、一次構造も決定されているが、それらの生理的作用については、充分明らかにされているとは言い難い。また、既知の蛋白ホルモンや活性ペプチドにおいても、既知の作用以外に、他の重要な作用があることも報ぜられつつある。このような情況下で、本研究は種々の蛋白ホルモンや活性ペプチド12種を用い、これらのものが飲水に関与しているかどうかを、ウズラを材料として調べた。小鳥は絶えず飲水するので、実験結果は30〜60分で得られるのでウズラを用いた。用いた12種の活性ペプチドのうち、9種類は飲水に影響を与え、3種類は影響を与えなかった。影響のあった9種は、それらの作用の仕方により、つぎの4つのカテゴリーに分類できる(カテゴリーの分類は、脳室内注射や腹腔内注射をしたのち、飲水量と尿量を測定した結果による)。 1.脳に作用して飲水を誘起するものはアンギオテンシン【II】、抑制するものはロイシン・エンケファリン,甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン,ソマトスタチンである。 2.腎臓に作用し多尿を起こさせる結果、飲水を誘起するものは副甲状腺ホルモンである。抗利尿の結果、飲水を抑制するものはアルギニン・バソトシンである。 3.脳と腎臓に作用して飲水を誘起するものは心房性Na利尿ペプチドである。 4.脳に作用して飲水を抑制すると同時に、未知の末梢にも作用して飲水を抑制するものにサブスタンスPがある。 全く作用しないものは、カルシトニン,ガストリン関連ペプチド,FMRF-アミドである。 以上のように、多くの蛋白ホルモンや活性ペプチドが飲水に関与することがわかったが、これらの作用が薬理的なものか、生理的なものかの決定は今後の研究に俟つ。
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