研究概要 |
長野盆地の形成史を明らかにするために, 盆地周辺地域の第四紀層の層序学的研究を中心におき, これに第四系の花粉分析資料と盆地周辺域に分布する火山岩類のK-Ar年代資料を加えることにより, 盆地周辺地域の第四系層序を明らかにした. 盆地西縁部と西側山地との間には, 第四系からなる丘陵が発達し, これらが盆地形成史の証拠を残すいろいろな時代に盆地に堆積した地層によってつくられている. これらの調査は, この2年間だけでは不十分であり今後も引き続き調査する予定である. 花粉分析の結果, これまで植物化石の少なかった盆地周辺の第四系について, どのような環境下で堆積したものか, その当時の古気候はどうかといった資料をたくさん得ることができた. なかでも, 長野層は, これまでに確認されている最終氷期の堆積物より寒冷な気候下の植物を含み, 層位的にはリス氷期に対比されることが明らかとなった. 盆地周辺地域に小分布する第3紀末から第4紀にかけての火山岩類の年代は, 1.75, 2.10, 2.77Maなどの値を示し, これまで地質学的に推定された年代よりやや古いことがわかった. これは, 長野盆地の形成が始まる前に, 盆地の縁にそって噴出したものであり, 盆地をつくる先駆的な運動の反映とみることができる. どのような運動に伴う火山活動なのか今後の課題である. 長野盆地の形成史を調査していくと, 河東山地の運動と深い関連をもつことがわかる. 盆地西縁部の現象は, 河東山地の傾動運動との関連でみると, 統一的に説明することができる.
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