研究概要 |
西南日本内帯の丹波帯・超丹波帯・舞鶴帯の古生界チャート、泥質岩について野外における分布,産状調査をおこなった。それら堆積岩の年代を含有される放散虫によって検討したところ、超丹波帯について新知見が得られ、短報として報告した。主要元素,微量元素組成についてはXMAおよびNAAによって分析数を増大させることができた。従来のものとあわせ合計215個のデータについて整理し、データベースとすることができた。またXMAおよびNAAによる分析結果を他の分析方法によるものと比較するために、島根大学理学部の蛍光X線分光分析装置による分析も行なった。この結果主要元素については、非常に良い一致が見られ、また微量元素については、両者の系統的な分析値の相違が明らかとなった。 丹波帯の古生界チャート・泥質岩について、組成上の特徴として把握されたことは次の点である。 1.緑色岩直上の上部石炭系,下部ペルム系は【Fe_2】【O_3】,Mn,Co等に富むとともに、セリウム負異常を示しており、海洋底形成後の熱水活動を受けている。 2.中部ペルム系は、特徴は少ないが、一部に【Fe_2】【O_3】が多くセリウム負異常を示すものが認められ、熱水活動は一部この時期にまで及んだ。 3.上部ペルム系は、泥質成分の少ない淡灰色層状チャートで、希土類分布パターンでは軽希土類が増加する。セリウム異常は無いかまたは僅かな正異常が認められる。 4.丹波帯上部古生界の特徴を他地域のものと比較すると、舞鶴帯ではZr,Hf等が多く、明らかに陸源物質の影響が強い。超丹波帯や秋吉帯などでは、中部ペルム系に酸性凝灰岩が多く、またセリウム正異常が見られるなど、熱水活動のない、より陸域に近い深海堆積物としての特徴が把握される。
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