研究概要 |
中生代後期〜古第三紀前半の中央構造線は左横ずれ変位で特徴づけられている。この中央構造線の北側に沿って、白亜紀末期の和泉層群が四国西部から近畿西部にかけて帯状(以下、和泉帯という)に分布する。その分布特性から、和泉帯(近畿東部以東を除く)を東西にA〜Dの【^-4】域に地域区分すると、中央構造線システムの実態が明らかになっているのはD域(和泉山脈〜淡路島東部)なので、本研究ではここを調査・研究した。この研究で明らかになった点及び試みを以下に述べる。 1.和泉層群堆積盆の海底古斜面:和泉層群中のスランプ褶曲を解析し、海底古斜面図の一部を作成した。それが示す古斜面の向きは大局的に東であり、和泉層群の地層の若化方向・向斜構造のプランジ方向とは調和するが、古流向の示す堆積時のほぼ西向きの古斜面とは逆のセンスである。このような古斜面の違いについては、堆積後、地層の東への傾動が考えられる。(1986年秋に口頭発表、日本地質学会関西支部報、No.102,p.6,合併号) 2.中央構造線のpull-apart basinとしての和泉層群堆積盆:本研究ではこれを作業仮説(モデル)とした。これをサポートする地質情報として、中央構造線システム及び背斜・向斜を示す地質構造図・地質断面図を作成した。中央構造線は東西に並走する2枚の主断層とその間の東北-西南性の分岐断層群からなる。これらに境される基盤はほぼ平行四辺形の地塊をなす。D域では74Ma以降中央構造線システムの左横ずれ運動に伴い、基盤にほぼ平行四辺形の堆積盆が東へ段階的に形成され、そこに和泉層群が段階的に堆積・傾動していったと考えられる。(1987年春の日本地質学会で口頭発表する) 3.今後の展望:中央構造線は日本列島(域)の形成論において重要であり、そのモデルの可能性を和泉帯のA〜C域(四国西部〜淡路島西部)においても今後検討する必要がある。
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