研究概要 |
近畿地方中・北部の篠山・氷上・亀岡盆地ならびに大阪平野,奈良・近江盆地において地表踏査と試錐調査を行い、約6万年前以降の最終氷期の堆積物の地質層序と古植物群の検討を行った。その結果、次のような成果が得られた。 1.丹波地域内陸盆地の表層地質は、河川周辺および山地緑辺を除くと、完新世堆積物はきわめて薄く、最終氷期の堆積物あるいはそれ以前と判断される堆積物が盆地底堆積物の大半を占める。これらは基底部が礫層となる以外は、湖沼成ないし湿地成の泥炭あるいは泥炭質堆積物からなり、植物遺体を多産することが多い。篠山盆地では数層の埋没林も発掘された。これらの堆積物には複数の大山系テフラと姶良Tn火山灰が挾在し、編年と各地の対比がなされた。周辺の奈良・近江盆地においても、姶良Tn火山灰を挾在する泥炭層が、また大阪平野ではこの前後の泥炭層が確認された。これらをおおう完新世堆積物は丹波地域と同様にきわめて薄い。 2.丹波地域の最終氷期の泥炭層からは多数の花粉・大型植物遺体・木材遺体が、試錐および発掘調査によって得られた。とくに最終氷期最成期前後の埋没林の発掘から、谷底ではハンノキ・カバノキ・トネリコ・ヤナギ各属を主要素とする森林が、山地ではトウヒ・ツガ各属、シラベ,チョウセンゴヨウ,ヒメコマツ,シラカンバ,コナラ亜属を主要素とする森林が成立していたことが明らかとなった。 3.周辺地域の植物遺体群集も丹波地域と同様の植生を示唆した。このことから、丹波地域とその周辺域には、標高差があるにもかかわらず類似性の高い植生が広域に卓越していたことがわかった。 4.約2.4万年前の姶良Tn火山灰の降灰は生態系の混乱をもたらし、一次・二次災害を引きおこした。
|