研究概要 |
昭和61年〜62年度にかけて, 後新生代における北西太平洋の古海況復元のために日本列島の南から北にかけて各地域に分布する新第三系について地質調査を行い, 岩相層序を確立し試料を採取した. 海成の浮遊性生物の分布は, 水塊との結びつきが強い. そこで, 浮遊性微化石群の時代的変遷を明らかにし又各種の地理的分布とその頻度を求めることによって古海洋を推定することができる. その際に, 基礎的なこととして各地区に分布する地層の対比がどの位正確であるか, その精度限界について吟味しなければならない. 今回, 沖縄・宮崎・奈半利・四ッ倉・中条地区に分布している鮮新統の浮遊性有孔虫死化による層位学的検討を行い, つの基準面が設定され, また一部古地機気層序との組み合わせに基づいて各基準面の同時性が検証された. 今後, 群集の時代的変化及び特微種の地理的分布と頻度を明確にし, 鮮新世における古海洋を明らかにして行く上での重要な基礎的資料が得られた. フツサマグナ南部地域の富士川流域に分布する新第三系について, 浮遊性有孔虫化石による層位学的検討を行い, 地質時代について新知見を得た. また従来代表者が行ってきた房総半島・掛川・高崎地域の新第三系との対比を明らかにした. 今回の対比に基づいて, 中部日本の中期中新世における古地理・古海洋の復元を試みた. まず基盤岩類の分布域がその当時海面上がどうかを基盤の分布する周辺地域の堆積物の古水深や堆積学的な面, 特に古流向, から推定し, 更に中期中新世初期から後期にかけてそれぞれ特徴的な化石群の変遷と地理的分布などから, 当時の古海流を推定した. その結果, フッサマグナ地域の南部と北部をつなぐ水路は中期中新世初期〜中期には存在していたが, 中期中新世の後期頃には, 関東・巨〓山地の隆起によってその水路は閉鎖され, その結果海流は著しく変化したことが明らかになった.
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