研究概要 |
駿河湾北岸地域は砂泥互層が主体をなし, シルト岩層が少ない. また, 地殻変動によって強く圧縮されている地域であるため, 岩石は堅硬で分解がむずかしく微化石を得ることは困難であった. このため, まず野外調査によって, できるだけ厚いシルト岩層から試料を採取すること, および堅硬な岩石の分解方法をいろいろ工夫することによって浮遊性有孔虫をとり出すことができた. その結果, この地域の各層群の年代的位置が明らかとなり, 地史解明の基礎を提供することができた. 断層で境される地塊の静岡層群は下位が浮遊性有孔虫化石帯のNo17a, 上位が〓17bに相当し, この層群の年代は後期中新世となる. 東側に分布する和田島層群でも新しく5層準から浮遊性有孔虫が得られ, No17にあたる. 北側に分布する川合野層群の浮遊性有孔虫種群もNo17aに相当するものであった. したがって, 静岡層群, 和田島層群, 川合野層群の現在地表に露出している部分は同時代で後期中新世にあたることがわかった. 小河内層群はNo17b〜No18で後期中新世から鮮新世, 清見寺層群は〓19の鮮新世, 浜石岳層群はNo21の鮮新世の後期に相当する. このように, 断層で境されるこの地域のより詳しい年代が明らかとなった. 伊豆半島の新第三系からの浮遊性有孔虫の産出はこれまでも乏しい. 地質調査により試料の選択と岩石処理を工夫した結果, 新たに7層準から浮遊性有孔虫を得ることができた. 湯ケ島層群の模式ともされる湯ケ島温泉近くの貝化石を含む地層はNo8の初期中新世に相当すると考えられる. そのほか, 伊豆半島の中央部で現在高度400〜500mの地点に鮮新世の地層が点在していることが明らかとなったが, これは伊豆半島全体が曲隆したことを示す.
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