研究概要 |
北海道の新第三系においては珪藻質泥岩が広域に渡って厚く発達しているので, 地層の対比や年代決定には豊富に存在する珪藻にもとづく生層序の有効性が再度確認された. 北海道の新第三系における珪藻層序は本州(東北日本)とソ連(サハリン, カムチャッカ), アメリカ合衆国(アラスカ)の新第三系を対比させる鍵となり得る. 北太平洋域における生物事件(出現, 消滅, 進化など)や生物地理を考える上で新第三系の対比と年代決定は重要な仕事である. 本一般研究によって北海道の西部と東部に分布する新第三系から約350個の試料を採集することができた. プレパラートを作成し, 光学顕微鏡による観察の結果では, 堆積盆地の中央部においては堆積物の累積荷重(埋没深度の増加)によるシリカの続成作用が進行してオパールCTが形成されるために予想以上に珪藻殻の溶解の生じていることがわかった. したがって珪藻殻が保存されていて生層序が設定できる場所としては, 堆積物の累重が少ない堆積盆地の縁辺部か, あるいは隆起部が最適であることを確認した. 東北日本において設定した珪藻分帯に北海道の新第三系から得た珪藻群集の分析結果を適用すると, D.praelauta帯, D.lauta帯, D.hustedtii帯, C.nicobarica帯など珪質堆積物の形成開始に先立つ前-中期中新世において4化石帯を見出せなかった. これは西部の粟丘ルートでみられた温暖性種の産出頻度の減少と産出期間の短縮と同じ様なことがこの時期にも生じていると考えられる. 古地磁気層序や放射年代値の併用が必要である. 西部の広い範囲に分布している古丹別層や増幌層で認められたD.hyalina帯が何故東部で認められなかったのであろうか. まだ解決できないが, テクトニクスに関連していると考えられる.
|