研究概要 |
西南日本周辺大陸棚の表層堆積物に関する研究の一環として, 陸源砕屑物が沿岸の浅海域に運搬される際の, 漸移的な堆積物と考えられる海浜砂の実態調査を, 中国地方山陰地域と四国地方全域において行った. 現地調査は, 1986年8月19〜22日には四国地方(4県)の60地点, 1987年8月2〜6日には中国地方山陰地域(4県)の53地点において行い, 113試料を採取した. 堆積物中の重鉱物は, 細粒〜微細粒に集中する傾向をもつが, 海浜砂では微細粒砂は失われている場合が多い, 試料採取は, 海浜の汀線付近の表層部を, 平型の小型スコップではぎとる要領で集めた. 粒度組成は, 1/2φ刻みの篩分法によって分析した. 中央粒径値において, 山陰地域では, 粗粒砂が6地点(11%), 中粒砂が30地点(57%), 細粒砂が17地点(32%)の割合となる. 四国地方では, 中粒砂が38地点(63%), 細粒砂が17地点(28%)であり, 残余が粗粒砂である. 5%HClを用いて, 浜砂中のCaCO_3量を求めた. 山陰地域では, 20%以上の含有量は山口県北西部に集中する以外は低い値をもち, 5%以下の地点は全体の73%におよぶ. 四国地方では, 足摺岬の5地点と, 室戸岬の4地点で10%を超えるが, 全体の78%の地点は2%以下の含有量をもつ. 重液(ブロモホルム)により分離した重鉱物は, 透明鉱物・不透明鉱物(主に鉄鉱物)・変質鉱物とに識別される. 透明重鉱物の主要構成要素には, 山陰地域では火山岩類起源の角閃石・輝石類が豊富であり, 地域により緑簾石や緑閃石が特徴的に出現する. 四国地方では, 角閃石・輝石類の他に, 綜閃石, 電気石, カンラン石, ザクロ石などが普通に出現する. 後背地に変成岩類が分布する所では, 緑閃石の他に, 藍閃石や紅簾石も出現する. 地質時代の砂岩中に産出頻度の高いジルコンは, 海浜砂中には含有量がきわめて少ない.
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