研究概要 |
種子島・屋久島から奄美大島へ至る海域,北部沖縄舟状海盆,東シナ海大陸棚縁辺部より採集した37点の底質試料について粒度分析,砂粒分析を行なった。その結果、種子島・屋久島から奄美大島へ至る海域,東シナ海大陸棚縁辺部の底質は砂(Shepard,1954)であるが、前者の海域の底質の方が後者の底質より粗く、粒子のほとんどが生物遺骸の破片から成ることが明らかになった。また、沖縄舟状海盆へ至る大陸棚斜面の底質はシルト質砂,海盆底では砂質シルト〜シルトで、水深・陸からの距離と調和的である。海盆底の1地点から、周辺の底質と不調和な砂が採集された。この堆積物中には浅海域に生息する底生有孔虫が含まれており、この砂が浅海域から海底地辷り、あるいは乱泥流によってもたらされた可能性が高い。 堆積物の分析と同時に、それらに含まれる有孔虫殻の処理を行なった。生体殻は原形質の染色によって分けられた。生体の確認された種について総個体数(生体+遺骸)に対する生体の比率を算出し(L/Tl値:大木,1986)、各採集地点の相対的堆積速度を出した。また、有孔虫総個体数に対する浮遊性有孔虫の比率を算出した。この値は水深とともに大きくなる(浮遊性有孔虫の占める率が高くなる)傾向を持つ。この傾向と異なった値を示す海域は、その付近の水塊に特殊な動きが想定され、海洋学的データとの比較検討が必要である。底生有孔虫については、種の同定を進めており、終り次第、底生有孔虫群集解析を行ない、水深・水質・底質等の環境要因との比較検討を行なう予定である。また、既に解析の終了した鹿児島湾の底生有孔虫群集を含めて南九州から沖縄へ至る海域の群集をまとめる予定である。
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