研究概要 |
本邦のスカルン型鉱床につき, その鉱床鉱種・伴う火成活動・生成深度・生成時代などを詳しく検討した結果, その成因的特徴をもっとも良く示しているのは鉱種による分類であるとの結論に達した. 即ち本邦のスカルン型鉱床は, 亜鉛-鉛型, 亜鉛-鉛型(-鉄)型, 銅(-鉄)型, 錫型, タングステン型の5種に分けるのが下に述べるように生成環境や生成機構との対応もよく, 意味のある分類といえる. 一方軽安定同位体比の測定や鉱物組合せの解析などの結果から, 本邦スカルン型鉱床を形成した熱水には様々なタイプが認められることが明らかとなった. 即ち(1)熱水自身も溶存物質もマグマ起源と考えられるもの, (2)熱水自身はマグマ起源であるが溶存物質は周辺の堆積岩類から抽出してきているもの, (3)溶存物質はマグマ起源と考えても差支えないが熱水自身は天水起源と考えられるもの, (4)熱水とその溶存物質の性質の変化が激しく, 幾種類かの起源の熱水が混合していると解釈されるもの, である. このような熱水のタイプと鉱種・地質環境などは良に対応を示す. 即ち, タイプ(イ)の熱水は銅型の鉱床を形成し, 磁鉄鉱系の深成岩に伴う. このような条件下では発生するマグマ水が充分な量の鉱床構成物質を溶存しているためであろう. タイプ(2)の熱水は錫型及びタングステン型の鉱床を形成し, チタン鉄鉱系の深成岩に伴っている. 泥質岩などに富む堆積岩の存在下でのみこのような鉱化作用が可能となるためと考えられる. タイプ(3)の熱水は亜鉛-鉛型及び亜鉛-銅型の鉱床を形成し, 主として火山岩を伴うなど浅所生成の鉱床に多い. タイプ(4)の熱水は特に亜鉛-鉛型と銅型にみられ, これも浅所生成の鉱床の形成に関与している. 浅い環境では地表からの天水の流入が多く, マグマ水との混合などを起して複雑な熱水系を発達させるためであろう.
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