研究概要 |
太陽系形成の過程においては, 原始太陽系星雲の冷却に伴って高温ガスから珪酸塩を主とする鉱物粒子の凝縮がおこり, これらの粒子の集積によって地球をはじめとする固体惑星や隕石が生成されたと考えられている. このような凝縮過程を実験的に再現し, 太陽系形成過程に関する新しい知見を得るために, 次のような実験をおこなった. (1)真空蒸発凝縮炉の製作と, Mg-Si-O-H系における凝縮実験. (2)オリビンとSiに富むガスとの反応実験. (3)オリビン結晶の粗大化実験. (1)真空に近い条件で試料を加熱, 蒸発させて, この蒸発ガスから凝縮がおこるように, 真空蒸発凝縮炉を製作した. この装置を用いて, Mg_2SiO_4-H_2系における実験をおこない, 凝縮のおこる実験条件を明らかにした. 凝縮は基本的に温度に依存し, VLS機構によるオリビン・ウィスカーの凝縮もおこることがわかった. 一方, 米国カーネギー研究所でおこなわれたMgSiO_3-H_2系での凝縮実験の生成物についての研究もおこない, 不均一核形成が凝縮過程に大きな役割を果たしうることを明らかにした. (2)原始太陽系星雲での凝縮過程では, 既に凝縮した鉱物と残りのガスとの反応が重要な役割を占めている. このような反応のカイネティクスを解明するために, オリビンとSiに富むガスとの反応実験をおこなった. 予察的な結果からは, オリビン結晶がミクロンオーダーのサイズよりも大きいと, 凝縮過程での反応はほとんど進まないことが予想される. (3)結晶のサイズは, 反応のカイネティクスだけでなく, ガス中での固相分離等の過程についても重要なパラメーターである. このため, オストワルド成長によるガス中でのフォルステライト結晶の粗大化に関する実験をおこなった. 予察的な結果からは, オストワルド成長による結晶の粗大化は凝縮過程ではおこらないことが予想される.
|