研究概要 |
この化学研究費補助金により下記の三つの成果を得た. (1)Rbを含む層状の新しい酸化マンガン結晶が合成された. 結晶はγ-MnO(OH)10ngを6N-Rb(OH)飽和溶液0.3Ceとともに銀チューブに封入し, 600°C, 2Kbarの水熱条件下で48時間反応させることにより得られた. この結晶は外形上層状構造を持ち, また層状に剥離する性質をもつ, また先に報告したRb-ホランダイトの450°C, 巨大トンネルをもつRb0.27MnO_2の350°Cの合成温度に比較し, この結晶は600°Cで生成するため最も高温型と考えられる. X線写真法による解析では, 全体として六万晶系の対称を示す, Rb_<0.27>MnO_2から推定される層構造をもつと思われるが, 回折点が五または六点に分離する複雑な構造を示すため, 正確な構造は未定である. (2)先に水熱条件下で合成され結晶構造が決定されたRbを含む酸化マンガン(Rb_<0.27>MnO_2)について高分解能電子顕微鏡観察を行った. この結晶はこれまでに確認さた最大の2×5のトンネル構造を有するため, このトンネルが均一な構造として存在し得るのか, それともこの大きなトンネルを安定させるために, Turner&Buscch達が観察している様な格子欠陥や成長層の互層が存在するのかが重要となる. 観察の結果このトンネルは均一な構造として存在することが確定された. (3)Baを含む新しい酸化マンガンBaMn_2O_3(OH)_2を240°C, 3.3MPaの水熱条件下で合成し, 結晶構造を決定した. 結晶は斜方晶系(a=11, 58.5(4)A2F2(コード), b=4, 1200(9)A2F2(コード), C=4, 390(1)A2F二(コード))であり, 空間群Cm2mである. 構造はMnOs八面体の鎖が, b軸方向に走り, これが組み合わせされた骨組構造より成り立っている. この骨組の大きな空隙にBaが収容されている. 大きなBa原子と酸素がBaOsの層を形成しfccの積み重なりをしており, その層間をMn原子が占めている. この構造は三価のMnのみを含むBa-Mn酸化物である点に特徴がある.
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