研究概要 |
キューバ鉱は220°C以上で立法晶系の高温型に転移する. 高温型キューバ鉱は熱容量異常を示す. この熱容量異常の性質を明らかにするために熱測定を行った. この転移は高温型キューバ鉱中の金属原子のガラス転移によるものと説明していたが, その時点でのカロリメトリーの装置の制限により十分にそのことを証明することが困難であった. 本研究では, この170-300°Cにおける熱容量異常の原因を明らかにするために行われた. 新しく作成した, 少ない試料で測定可能な断熱型熱量計を用いて研究を行った. Heと共にガラスアンプル中に封入したキューバ鉱により測定を行った結果, この熱容量異常は, 昇温速度を変えても同じように現われ, 250-270°C付近でアニールしても緩和現象を示さないことが明らかになった. このためこの熱容量異常はいわゆるガラス転移ではなく, 可逆的な転移と考えられる. X線的研究により, 少なくとも常温に急冷された高温型キューバ鉱は, 金属原子の一部が, 硫黄の3配位位置方向ににじみ出したような電子密度分布を与える. これらのことを総合すると, 高温型キューバ鉱は, 170°C付近から金属原子の熱振動がはげしくなり可逆的に新しい相に移る一種の二次相転移を示す可能性が高くなった. これを確かめる最良の方法は, 高温下での単結晶による構造解析であろう. 本研究で開発した, 少試料断熱型熱量計は, 約700°Cまで精度0.3%で測定できるので, 試料の量が十分に得られない鉱物の中・高温の熱容量測定に利用することができる.
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