研究概要 |
我国の堆積岩中の初生的な燐酸塩は, 生物の遺骸を含めて燐灰石系鉱物と藍鉄鉱系鉱物にほぼ限られる. 母岩は石灰質岩と粘土質岩は従来知られていたが, 層状チャートとよばれる粘土質薄層をはさむ珪質岩の例がいくつか見つかった. 燐灰石系鉱物はそれ単独では熱や圧力にも, 弱アルカリ〜弱酸性溶液に対しても強いため, 続成作用, 変成作用の過程で鉱物種の変化はほとんどおこらない. しかし, 硫化物を伴ない地表近くあるいは地下水の循環がよくおこるような場にくると分解され, アルミニウムや第二鉄などを主成分とする燐酸塩が生成される. このような現象は硫化物と燐灰石系鉱物を伴なう熱水性粘土鉱床においても全く同様に観察される. 藍鉄鉱系鉱物は初生的には主に淡水性の粘土質堆積物中によく見られる. このような堆積物が天水あるいは地下水によって酸化作用を受けると, 藍鉄鉱系鉱物は分解され, 一般には非晶質物質に変化したり, 燐酸分の溶脱がおこり, 低結晶度の水酸化第二鉄(いわゆる褐鉄鉱)になる. しかし, もとの藍鉄鉱系鉱物にマンガンがある程度含有されてしかも酸化状態があまり強くない場合には, マンガンを含む第二鉄を主成分とする数種の燐酸塩が生成されるようになる.
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