研究概要 |
薄膜もしくは数ミクロン以上の厚みの非晶質磁心材料をスパッタリングを高速化する事により作製する。膜の形成速度を上げるため、プラズマを移動させる方式を考案し、通常の電力では有効に働く事を確認している。本実験では、定電流高圧電源を購入し、放電電流を1Aから7Aに増やし、ターゲットの過熱状態,膜形成速度,膜の透磁率,抗磁力を調べた。プラズマを固定した時は、約3Aで鉄ターゲット表面に再結晶が見られるが、移動した時は5Aまで変化がなく、膜形成速度は、0.75ミクロン/分が得られた。更に、7Aでは1ミクロン/分を越えたが、若干の再結晶が起った。現在、ターゲット冷却を間接から直接水冷へ改善中であり、更に数倍の速度が期待できる。 以上の結果から、極薄非晶質薄帯の作製は5Aで行った。ポリイミドフィルム上にCo-Zr-Nb,Co-Ni-Mo-Zr合金を連続形成した。これに熱処理を旋し、磁心損失,透磁率を調べた。以下は、その結果である。 1.従来報告されている強磁性体の高速スパッター法に比べて、最も高速の膜形成が可能になった。ターゲット冷却法の改善により更に高速化する事が期待できる。2.厚さ数ミクロンに形成した長尺の磁心材料は、ガラス基板上の試料に比べて抗磁力が大きく、また従来の非晶質薄帯に比べてヒステリシス損失が大きいが、MHz帯における動的な損失は小さい。ヒステリシス損失を約半分にできれば、新しい高周波用磁心となる。現在、ポリイミトフィルムを基板としているが、セラミック基板上では損失が小さいので、基板表面処理により改善できる。
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