研究概要 |
多量の銀を含むカルコゲナイド非晶質半導体は, 次のような特異な現象を示す. (1)光照射による金属銀粒子の表面析出(光析出現象). (2)電子線照射による構造変化. (3)光起電力効果. (4)交流電導度の著しい温度依存性. これらの現象は, すべて, 半導体中に多量のAg^+イオンが存在することに関係している. 本研究の目的は大きく2つに分けられる. 第一は, 光・電子線記録材料あるいは高感度温度センサーへの応用を目的とした研究である. 第2は, X線回析とX線光電子分光により非晶質構造及び結合状態の解析を行い, 多量の銀を含むカルコゲナイド非晶質半導体の構造を明らかにする研究である. 応用を目的とした研究として以下に述べる研究を行なった. (1)光析出現象:(Ge0.3S0.7)100-x Agx+y・Au系薄膜に注目して, 金添加量に対する光析出感度, 像分解能及び析出粒子の形態の変化をおもに可視光分光透過特性とSEM像をもとに調べた. (2)電子線構造変化:ガラス基板上に上記の薄膜を作製し, 直径100μmφの電子ビームを照射し, 可視光透過特性の変化を調べた. また, X線回析, EpMAにより析出銀の形態を調べた. そして, 現象の機構に関するモデルを提案した. (3)光起電力効果:As-S-Ag系およびGe-S-Ag系バルクガラスにAu, pt, Cr等の電極を付け, 光起電力効果を調べた. 上記の薄膜の光起電力効果も調べた. (4)交流伝導度の温度依存性:上記薄膜が低周波領域(1〜10^2Hz)で交流伝導度の極めて大きな温度依存性を示す(10^3〜10^41°C)ことを見い出した. 構造に関する基礎研究として以下に述べる研究を行なった. (1)ESCAによる結合状態の解析:上記薄膜及び加熱生成結晶等のX線光電子スペクトルを測定し, 構成元素のケミカルシフトをもとに結合様式(Ag^+イオンの存在状態)を調べた. (5)X線構造解析:上記薄膜及び加熱生成結晶等のX線回析データを得た. 解析は, 他の部分に時間をとられて, 予備的段階にとどまっている.
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