研究概要 |
本研究では, エネルギー散逸がある時の超伝導体の結晶粒界を取りあげ, その電子構造の特異性は成膜プロセス時における挙動を明らかにし, 電気的特性への影響を明らかにするために制御可能な粒界を持つ実験的モデルにより特性を解明することを試みた. 実験的モデルとしてS-N-S二次元接合集合体, ニオブ酸化物超微粒子集合体とLa-Sr-Cu-O酸化物超伝導体を用いた. 1.S-N-S二次元接合集合体: 粒界部に導入した不均一なグラニュラー構造のために電子系が局在化し抵抗が, 常伝導抵抗より温度の減少につれて増加する現象が見出された. 超伝導粒子間のジョゼフソン効果の結果, 抵抗の温度依存性に周期的な段階状の抵抗変化が見出された. 2.ニオブ酸化物超微粒子集合体: 0.3torr以上のアルゴン圧力の下で得られた平均粒径250Aの準安定酸化物超微粒子の酸化機構を電気抵抗により研究するためのモデルを提案した. 10^<-e>から数torrの範囲の酸素分圧に対して実験し, 酸化物成長率と酸素分圧の関係から微細な準安定構造を持つ実質によると思われる変化を見出した. 3.La-Sr-Cu-O系超伝導体における電圧揺らぎと相転移の電流依存性: 粒界部の抵抗は半導体的温度依存性を示し, 電流に依存する2本のピーク状の抵抗異常が観測された. 低温側のピークは35K付近に存在し高温側のピークは電流に強く依存して, 室温まで観測できた. ピークの間の領域は等比級数を形成する離散的値よりなっていた. ピークのR-T特性は急激に立ち上り, 電子系の一次の相転移が共存することを暗示している. 結晶内の多様な血管はキャリア密度を支配し, 電流依存性は粒界部の電子が電界の影響を受けキャリヤ数が制御されたものと考えられる. 離散的電圧群は系の状態が三個の力学系よりなることを示している.
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