研究概要 |
最近二元系の化合物半導体はレーザデバイスや高移動度デバイスなどに見られるような半導体デバイスとして重要な位置を占めるようになった. これに対し, 構成元素として族番号の異なる三種類以上の元素をもつ, いわゆる多元化合物半導体は, これまで良質で大型の単結晶作製に難があることからデバイスもさることながら, いまだ基礎物性研究の域を出ていないのが現状である. しかし, 最近のMBE, MOCVD等による結晶作製技術により, エレメントの多い物質についても均質なものを得ることが期待できるようになった. このような状況を受けて, 多元化合物における物性の確立, ことに材料設計的観点から多元混晶の研究の重要性が増しつつある. 本研究では, 多元系への出発点としての三元系において, 最も注目されているカルコパイライト型に焦点を当て, カルコパイライト化合物における諸物性と, 物性にかかわるパラメーターとしての平均原子量との関係を指摘すると共に, イオン性と物性との関係についても考察した. また, これより導入された指導原理をカルコパイライト混晶半導体の材料設計へ応用することを試み, エネルギー変換素子用材料開発という観点から, 格子整合を考慮した禁制帯幅の等高線図を作成した. 次に, 予測された等高線図を検証するため, 18種類のI-III-VI_2族カルコパイライト混晶を直接溶融法により作製し, 種々の物性測定からこの材料設計法の有効性を確認した. 以上述べたように平均原子量による物性の記述および混晶系における材料設計への応用は, 多元化合物もしくはその混晶系という多種多様な物質群を理解するには有効であり, しかも実用的であることが明らかになり, 本研究の目的は達成されたと考えられる.
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