研究概要 |
高圧下において溶融状態にある二種類の結晶性高分子同士が相溶し得るかどうかを, 高圧下の示差熱分析法(DTA), 光透過法(LT), X線回折法(XD)などによって調べた. はじめに, ナイロン6とナイロン12から成るブレンド系について, 高圧下のDTAとLTによって, 常圧から600MPaの範囲で相図を求めた. その結果, 約500MPa以上において, 液相線が混合比50/50で最小となる共晶反応類似の現象を見いだした. しかし, そこでは共晶反応を示す低分子混合系の相図にみられる様な共晶線が見いだされなかった. その理由として, 高分子混合系の場合, 分子の移動度が極端に低いために共晶反応が起こり得ないか, または, 起こっても反応が非常に遅いために観測できないかであると考えられる. このブレンド系の結晶構造をX線回折測定によって調べた結果, 約500MPa以上でナイロン12のγ型がα型に転移し, 系全体がα型になることが分かった. 2つの高分子が同じ結晶構造をとることは, エピタクシャル成長の可能性(M.Kyotani,J.Macromol.Sci.,B21,219(1982))から考えて, やはり共晶反応が起こる可能性を示唆している. 走査型電子顕微鏡によって混合の状態を観察した結果, 約500MPa以上のブレンド系において, ナイロン6とナイロン12が数10^2nmのサイズのバンド状の形態をとって混合していることが分かった. また, この研究の過程で, 高圧下のX線測定を行うために, 従来の方式とはまったく異なる内熱式の高圧X線回折装置を作製した. 今後, この装置を用いてブレンド系の高圧下の構造を調べる予定である. さらに, ポリエチレンテレフタレート(PET)とポリカーボネート(PC)との混合系についても相溶性の研究を開始した. 現段階では, 300゜Cで溶融ブレンドした50/50の系においてPETが結晶化し得ないことから, PETとPCが相溶する可能性を認めた. この研究も今後発展させる予定である.
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