研究概要 |
良好なランダム性,計数率の高安定性,広い計数率レンジ,という三つの重要性能を同時に滿足するランダムパルサを試作完成させることができた。第一の、ランダム性については、光子計数式(これをランダムパルサに用いるのは著者の提案である)は本来、すぐれているのであるが、使用回路のリンギングによる悪化が問題となるため、過渡応答のよい高速前置増幅器を製作し、光子計数式本来の特性を害わないようにすることができた。第二の計数率安定性については、ディジタル素子による積分制御方式の採用により0.01%/30℃という超高安定度を得ることができた。第三の計数率レンジについては、増幅器および波形整形部の高速化により、【10^7】PPSという上限の達成に成功した。計数率レンジの下限の改善については、光電子増倍管のダークパルスの存在が阻害要因であったが、1KPPS以下のレンジで、パルス波高識別レベルを切換えて高かくする方法により、10PPSという非常に低い下限の達成に成功した。以上のように性能を重視する設計にも拘らず、回路簡単化にも意を用いたため、30cm×30cm×10cmという、さほど大きくはない寸法に全回路を納めることができ、実用性を害わない規模のものとすることができた。 以上により、性能的には極限に近い高性能を持ち、装置の複雑さについては実用性を害わない程度の規模に納めたランダムパルサを完成させることができた。応用の第一として、放射線パルス計数装置の異状診断法の研究も行なった。本装置は、"ランダムパルスの標準"に値する良好なランダム性を持っているので、異状模擬回路に本装置の出力パルスを入力し、パルス列の異状パターンの特長を実験的に調べたのである。また、応用の第二として、時間分析器の微分非直線性測定も行なった。
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