研究概要 |
正弦波位相変調されたレーザ光を参照光として用いる正弦波位相変調干渉計において得られる干渉信号から超精密加工表面の形状を高精度で求めるための最適な干渉信号の信号処理方法について研究を行なった。その結果、CCDイメージセンサで得られる干渉信号の積分値を直接用いる新しい信号処理方法を確立した。すなわち、CCDイメージセンサの積分時間を正弦波位相変調の4分の1周期に設定することでCCDイメージセンサの出力から得られる4つの積分値を線形代数演算することにより表面形状が求まる。この信号処理方法を積分値解析法と呼ぶ。積分値解析法における正弦波位相変調の最適な変調振幅,位相を加法性雑音によって生じる測定誤差を理論解析することによって決定した。又、正弦波位相変調が最適な変調振幅,位相からずれた場合において生じる測定誤差も理論的に明らかにした。これらの理論解析によって、積分値解析法では2nm以下の測定精度が得られることが明らかとなった。 以上の解析結果に基づき、2次元CCDイメージセンサを用いた正弦波位相変調干渉計を作成した。CCDイメージセンサの素子数は60×60であり、測定領域は一辺約5mmの正方形であった。磁気ヘッドのレール面の表面形状を測定した結果、約1.0〜1.5nmの測定精度が得られ、レール面の傾き等が精確に検出された。干渉信号の周波数成分を求めることによって表面形状を得る以前に提案した方法(周波数解析法)に比べ、積分値解析法の測定精度は多少悪いが、演算処理時間は約10分の1に短縮された。これらのことにより、積分値解析法は測定点の多い2次元表面形状の測定に対して極めて有効な信号処理方法であり、本方法による正弦波位相変調干渉計によって2nmの精密さで表面形状を測定できることが明らかとなった。
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