研究概要 |
本研究は金属と誘電体を組合せた波長に比べ非常に薄く、細い新しいタイプの光伝送線路の可能性について、理論,実験の両面から検討することを目的としている。そこでまず最も単純な平板光ストリップ線路の光伝送特性およびその厚み限界について、理論的考察を行った結果、以下の成果を得た。 1.現存の金属の複素屈折率は可視近赤外では実部,虚部が同程度となるため、その光伝送の振舞いはマイクロ波ストリップ線路,誘電体光導波路のいずれとも大きく異なっており、とくに金属内に深く分布する光波は誘電体中のそれとは全く異なる性質を持つことを導いた。 2.光伝送路の厚さ,幅は波長より1桁程度薄くできることを理論的に示し、従来の光ICに比べ2〜3桁高密度の光回路の可能性を導いた。ただ伝送損失は非常に大きく、波長程度の大きさの光回路には問題ないが、大規模光回路の構成には伝送損失の少ない伝送路素材の開発も重要であろう。 3.この伝送路には電気信号も同時に伝送できる。電極間隔がサブミクロン以下となるため、電界強度が大きくとれ、カー効果等の電気光学効果が効率的に利用でき、光制御が容易になる他、レーザー励起,検波,逆電気光学効果による新しい光検波など従来にない新光機能デバイス構成の可能性を持つ、このような新光デバイスについても具体的に検討を進めつつある。 4.1〜3の成果はまだ十分にまとめるに至っておらず、引続き、研究を進め、今後応物学会等で発表してゆく予定である。 次に実験的研究については、現在3.39μm域で進めつつあるが、まだ十分な成果を得るに至っていない。しかし放電電極と光導波路クラッドを兼ねたSiCを用いた高能率導波形【CO_2】レーザの成功(61応物発表)は寸法は大きいが、本研究の具体的成果の1つである。
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