研究概要 |
研究第一年目に製作した交流電位差システムを使用し, 200°C焼戻しされた高張力鋼(SNCM8)切欠き平板(切欠き半径を種々異った場合について)を用い, 空気中および3.5%食塩水中での疲労亀裂伝藩試験を行い, 切欠き底での微小亀裂の開閉口, 伝藩挙動および破面の観察を行った. 更に, 破壊破面および破面下の残留応力をX線回折法で測定し, 疲労試験環境が破面下の残留応力分布に及ぼす影響を検討した. また塑性域深さに関して各種破壊要式の場合と比較した. その主な結果を次にまとめる. (1)切欠き部材での疲労亀裂の伝藩の連統計測に電位差を応用した場合, 光学顕微鏡表面観察では不可能な板厚中央部の非貫通亀裂の成長が測定され, 微小亀裂の初期成長には有効であった. (2)微小疲労亀裂伝藩速度は, 長い亀裂のda/dn-△K関係で予測される早く, かつ△Kのの増大とともに伝藩速度が低下した. これは伝藩速度を有効応力拡大係数範囲△K_<eff>で整理すると, 長い亀裂のdn/dn-△K_<eff>関係に一致した. (3)残留応力が消失する深さωyは最大塑性域深さに対応すると見なされるが, K_<max>との間に次の関係が成立した. ωy=α(K_<max>/σy)^2 ただしσyは降伏応力である. α値は空気中疲労破面で0.19, 食塩水中疲労破面で0.06であった. α値が環境により異なる理由を, 塑性域の降伏応力が異るものとし, その値を評価したが, 食塩水中で著しい材料の硬化が推定される. このα値に関しては, 今後の詳細な研究が必要である.
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