研究概要 |
1.焼結アルミナのX線残留応力測定が可能な回折面として, CrKα線を用いた(1.0.10), (220)面, FeKα線による(2.1.10)面, XuKα線による(146), (4.0.10)面を軸出し, X線的弾性定数の実測を行うとともに応力測定精度に関して検討した. X線的弾性定数をReussモデルを用いて単結晶の弾性定数より理論計算した結果と比較すると, 回折面による弾性定数E/(1+ν)(E=ヤング率, ν=ポアソン比)の大小関数は理論と一致したが絶対値は気孔の存在により, 実験値の方が低い. また, 純度の低下とともに低くなる. 結局, 精度の高い測定面は(2.1.10), (146)面である. 2.常圧焼結窒化ケイ素に関してOrKα線による(411)面, CuKα線による(323)面のX線的弾性定数を実験的に定めた. 精度は(323)面の方が高い. 研削面の残留応力は圧縮であり, 砥石の粒度が大きい方が大きな圧縮で, しかも研削垂直方向の方が大きい. 侵入深さの異なる2回折面のX線残留応力測定より残留応力の内部方向への分布が推定できる. 表面残留応力と圧こんき裂の大きさとは密接に関係していた. 3.部分安定化ジルコニアに関しては, CrKα線による(133)面を使用したX線応力測定が精度が高い. 研削面残留応力は圧縮であり, 窒化ケイ素の場合いと同様に砥粒が大きい程また研削に垂直方向の方が圧縮は大きい. また残留応力は変態量が大きい程おおきな圧縮となる. 4.シンクロトロン放射光を用いて行ったアルミナおよび窒化ケイ素のX線弾性定数の測定値は, 通常の特性X線を用いた平行ビーム法の結果とほぼ等しく, シンクロトロン放射光に標準試験的意義を持たせることができる. 5.炭化ケイ素(6H)に関しても同様な検討を行い, FeKα線(213)面が応力測定に最適であることが判った. 今後, 残留応力の強度への影響に関して定量的な検討が必要である.
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