研究概要 |
ナイロン6に短かい炭素繊維を重量比15%含むCFPRの平衡水分率に達した試片を応力振幅7.0Kgf・mm^<-2>の条件で, 平均寿命の1/3, 1/2及び3/4の回数疲労させ, 疲労損傷による水分の脱吸着による差異を真空, 高温(60゜C)および室温乾燥空気中(約20%RH)の3環境下での脱吸着の差異を緊張状態(約0.2%のひずみが発生)と無緊張下及び処女材の場合と比較検討した. その結果 1)吸脱着のいずれの過程にあっても疲労損傷を受けた試片には処女材より大きい吸脱着量の変化がみられた. とくに, 真空中においては疲労損傷の程度に対応する脱着量の増大が認められ, 種々の損傷の過程で試片界面の増大と密接に関係することがわかった. この傾向は材料の負荷状態に於いてより顕著となる. 2)しかし高温の乾燥空気中では緊張状態にもかかわらず処女材との差異は明確に認められず, 疲労損傷の程度に対応する差異は明確でなかった. 3)脱吸湿特性についても室温条件下では各過程の初期段階で吸脱着量を経過時間の平方根との間にほゞ比例関係が認められるが, 次第に飽和する傾向が認められ, 全体として擬下ick型の特性を示す. 4)高温における脱湿特性では直線的な関係を示す領域は室温における場合より狭い領域でのみ認められ, 脱湿量の変化の飽和傾向は, 室温の場合よりより短時間で認められた. 5)材料の疲労過程でみられる繊維・母材界面の局所的なはく離に始まる微小き裂の発生, 空孔の形成から主き裂への進展に至る材料組織構造の変化が, 水分子の濃度差が生じる環境下におかれると脱吸湿特性に反映することが, 諸片表面のSEM写真の観察からも明らかとなった. このような点から高分子系複合材料を宇宙飛翔体や同空間の構造物として用いるとき, 設計面でも留意すべき点であり, 材料組織変化がその寸法変化を始め, 重量や気密性等にも影響を及ぼし, 負荷状態でこの傾向が一層大きくなることが明らかとなった.
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